肉食系御曹司の餌食になりました

「大丈夫ですよ。すぐに代役を用意しますので」

「代役? こんな土壇場で、企画に乗って結婚してくれるカップルがいるんですか?」

「代役にはデモンストレーションという形での挙式をしてもらいましょう。
いずれは結婚の運びとなるふたりではありますが……さすがに本当の挙式とするには、色々と面倒な問題が生じますので」


つまり、支社長は結婚の予定のあるカップルを知っていて、デモンストレーションという形なら協力を頼めそうだと考えているみたい。

もしかして智恵のことだろうかと思い、「事業部の杉森智恵ですか?」と聞いたら、笑って『違います』と返される。

今、名前を教えてくれないということは、私の知らない人なのだろう。引き受けてくれるなら誰でもいい。救われた思いだ。

でも、広報部が制作したポスターやWEBサイトの広告には、デモンストレーションという言葉を記載していないけど、それは大丈夫だろうか?

『いずれは結婚の運びとなるふたり』なら、嘘の広告には当たらないか……。なるべくなら早目に入籍してほしいところだけど。


代役案を示されて、焦りは完全に引く。

「それじゃ早速、代役のふたりに連絡と企画説明を」と言ったら、『全て私がやりますので』と返された。


「でも、支社長は別の仕事もあるでしょうし、手が空いている私の方がーー」

「大丈夫です。任せて下さい。
それより亜弓さん、花村さんに代わってもらえますか? 急いでご相談したいことがありまして」

「は、はい」

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