肉食系御曹司の餌食になりました
十二月二十四日、クリスマスイブ。
今日はいよいよ雪とガラスのマリアージュ企画の、ウェディング本番だ。
開始時刻は十七時からで、事業部のほぼ全員と他部署の数人は昼から出社し、直前の準備に勤しんでいた。
支社長は『すみません、出掛けてきますのでなにかありましたらご連絡を』と言い置いて、十四時過ぎに会社を出て行ってから戻らない。
準備は滞りなく進んでいるし、後は牧師と代役カップルが来るまで、特別な仕事はないけれど……。
ここは大通公園の西八丁目。
冬空にそびえるテレビ塔を見ると、時刻は十五時二十分になっていた。
夕日は手稲山の稜線に仄かに赤みを残すだけで辺りは薄暗く、早くも夜の気配が漂い始めている。
イルミネーションは少し前に点灯し、木々やオブジェを彩り、観光客がカメラを向けていた。
「わぁ、綺麗!」と若い女性の集団が褒めてくれたのは、私達が手掛けたこの幻想的なガラスの空間。
青、白、黄色、緑、ピンク、紫と、六色の淡い光を放つ板ガラスを組み合わせた大きなオブジェが公園の六ヶ所に配置され、その間を縫うようにガラスの小路を設けている。
その道を歩けば、横からも上からもガラスを通した優しい光に包まれる。
進んだ先にはステージが。
教会ふうのオープンセットをガラスで創り、三枚のステンドグラスからは七色の光が、ステージ上に薄っすらと降り積もった雪を美しく彩っていた。