肉食系御曹司の餌食になりました

隣に立つ支社長を横目で見ながら考える。

コンビニに来たけど、お財布を忘れたという凡ミスをしたのだろうか?

いや、これは嫌がらせかも。

言葉遣いは丁寧で、いいとこ育ちのお坊ちゃんという雰囲気がにじみ出ているのに、時々性格の悪さを感じる。

それは多分私にだけで、男も女も、他の社員からは支社長に対しての褒め言葉しか聞いたことがないから。


後で代金はきっちり請求しようと考えている内に順番が来た。

レジカウンターにカゴを置くと、支社長が店員に「そこの唐揚げもお願いします」と追加注文していた。

え、カツサンドと牛カルビ弁当に加えて、唐揚げも食べるの? 肉食男子なんだ……。


お弁当とお握りを温めてもらい、千九百二十円を支払おうとお財布を開けたら、支社長が店員にクレジットカードを渡してサッと会計を済ませてしまった。


「は? あの、支社長」

声をかけても振り向かず、彼はレジ袋を手にスタスタと店の外に出て行き、私は慌てて後を追いかけた。

お財布を忘れたわけではなかったみたい。嫌がらせで私に支払わせようとしたのでもなかった。

それなら、なぜ一緒に会計をしたのか。

隣に追いつき「私の分は自分で払いますから」と言ったけど、「小銭はいりません」と太っ腹な答えが返ってきただけで支払わせてくれそうになかった。

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