肉食系御曹司の餌食になりました
鏡に映るのは、ブライダル雑誌の表紙を飾りそうな花嫁だった。
これが私なの? たしかに美人かもしれない……。
Anneも華やかだけど、あっちは大人の色気が出るようにと、こってりめのメイクをして目立つアクセサリーで飾り、肌を露出させている。
今の私はAnneと百八十度違った、清純で透き通るような華やかさだ。
ひとえに花村さん達プロの腕がいいということだろうけれど、見たことのない自分の美しさに驚いて言葉が出てこなかった。
私の反応をウフフと楽しむ花村さんは、壁掛け時計に目を遣って、「あら大変。急がなくちゃ」と、またテキパキと動き始めた。
ドレスの上に真っ白でフワフワの毛皮のショールを羽織らされた私は、背中を押されるようにして支度部屋から出て、元の店内フロアへ。
そこには先に支度を終えた支社長が待っていて、視線が合うと、お互いに息を飲んだ。
ライトグレーのフォーマルスーツを纏った彼は、どこかの国の皇太子かと思うような気品あふれた凛々しさだ。
ジャケットの内側のベストとネクタイは光沢のある生地で、ジャケットと同じ生地にしないところに大人のお洒落な遊び心も感じられる。