肉食系御曹司の餌食になりました

ゆっくりと歩み寄り、私の手を取る彼と見つめ合う。


「なんて美しい……。このまま、あなたをさらってしまいたい」

「あ、ありがとうございます。支社長も素敵ですよ……」


私、どうしたんだろう?

目を逸らして俯いたのは、彼のストレートな褒め言葉に照れているからだ。

顔が熱いということは、きっと耳まで赤くなっていそうな気がする。

こんなキャラじゃないはずなのに、汚れを知らない少女のように恥ずかしく思うのは、真っ白なドレスを着ているせいなのか。


外に出てワゴン車に乗り込むと、藤田さんに驚かれた。


「平良さんって、美人だったんですね!」


褒めてくれたんだろうけど、そこには普段の地味な私を低く見ていたという、正直さが隠されずに表れている。

社内での男性ウケがよくないことは自覚しているので傷つくことはなく、むしろ「いつもの亜弓さんも美人です」とフォローする支社長の方をおかしく思うだけ。

支社長の女性の趣味が一般的ではないことを、指摘してあげるべきだろうか?

いや……やめておこう。

札幌にいる間は、どうかそのままでいてほしい。

地味な私でも女性としての魅力を感じて求めてくれる彼の愛に、もう少しだけ浸らせて……。

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