肉食系御曹司の餌食になりました

牧師が聖書を朗読し、幸せを願って夫婦としての生き方を説いてくれる。

その後はお決まりの「病めるときも健やかなるときも……」という誓いの言葉で、「誓います」と躊躇いなく答えた支社長の横顔に、つい振り向いた。

誓っていいのだろうか?

デモンストレーションという名の偽物の挙式なのに、神様に怒られやしないかと心配しながらも、私も小さな声で「誓います」と口にした。


そう言えば、この挙式はどこまで本来の流れを踏むのだろう?

新婦役が私だと知らされ、慌ただしく支度して戻ったため、それを聞かされていなかった。

ここに立つはずだった若いカップルのふたりに説明したのは、省略なしの正しい挙式の進行で、それは頭に入っているけれど、デモンストレーションだし、きっとどこか省くはず。

指輪の交換や誓いのキスは省略されるだろうか?と思っていたら、「指輪を交換して下さい」と牧師に言われ、目の前に白いビロード生地の指輪台を持ってこられた。


ガラスの指輪だ……。

透明なリングに、ダイヤモンドカットされた紫色の小さなガラス玉が付いている。

それが私用で、彼のものは全体的にほんのりと紫がかったリングのみ。


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