肉食系御曹司の餌食になりました
麻宮にはひとつ誤算があった。
四ヶ月ほど前のクリスマスイブ、ウェディングドレス姿で歌わせることで、彼女を見る社員の目が変わることは予想していた。
それでもパートナーとしての自分の存在があるから、彼女に手を出す無謀な男はいないものだと踏んでいたのだが、なにか怪しい。
あからさまな誘いはなくとも、数人グループでの飲み会に誘われるようになったと彼女は言う。
事業部を覗きに行くと、仕事中の彼女を盗み見するような男達の視線が気になった。
彼女がリーダーとしてこの四月から始めたプロジェクトには、一緒に働きたいと名乗りをあげるメンバーが、全員男だということも気に触る。
男達が求めても、彼女は跳ねのけることができる人なので、誰かに盗られる可能性は低いと安心したいところだが……麻宮の心に、苛立ちや嫉妬、独占欲が渦巻いていることも事実であった。
引き止める言葉を見つけられない麻宮の前から亜弓は離れ、洗面所で支度をする物音がリビングまで聞こえてくる。
それから数分して戻ってきた彼女は、デニムパンツとグレーのカットソーという素朴な服装から、ベージュのタイトスカート、ブラウス、紺色ジャケットという服装に着替え、ナチュラルなメイクを施していた。