肉食系御曹司の餌食になりました
挽き終えた珈琲粉をペーパーフィルターに移し、沸かした湯をケトルで注ぐ。
円を描くようにゆっくりと丁寧に。
一杯分の珈琲を淹れるのに十五分もかけた彼だが、それでもまだスマホは鳴らなかった。
ソファーに腰掛け、テレビをつけ、珈琲を飲みながらスポーツニュースを見終えると、時刻は〇時半。
やはり亜弓からの返信はなく、麻宮は焦り始めた。
もうそろそろ三次会をお開きにしてもいい時間なのに、メールに気づかないということは、彼女の身に不測の事態が起きたのではないだろうか……。
もちろんカラオケの延長という可能性や、スマホの充電切れ、または、もう一軒と盛り上がりメールに気づかないという理由も考えられる。
それでも万が一という心配を抑え切れず、麻宮は亜弓に電話をかけた。
コール音は十回聞こえて、留守電話に切り替わる。一度切ってまた掛け直すも、彼女は応じてくれない。
眉間に皺を寄せて立ち上がった麻宮は、ジャケットを羽織り、車のキーを持って自宅を飛び出した。
束縛と取られないようにと、カラオケ店の名前を聞いていなかったことを悔やむ彼。
しかし、一次会と二次会の飲食店の場所は、すすきのだと聞いているので、カラオケ店もすすきののどこかの店だろうと予想する。
それだけの情報で、麻宮は亜弓を探そうとしていた。