肉食系御曹司の餌食になりました
マンションの地下駐車場から、夜の街へと走り出す。
すすきのまでは十分弱。
今夜はスーパームーンが見られるとテレビで騒いでいたが、夜空に月を探す余裕は、麻宮にはなかった。
すすきのの繁華街に出ると速度を落として、通行人の姿に視線を配り、カラオケと書かれた看板も探す。
昼間のようなネオンが輝いているので、視界に不自由さは感じないが、週末ということもあってこの時間になっても人が多い。
加えて車を走らせて確認した限りでも、カラオケ店の数は結構あることに気づき、麻宮は溜息をつきたい気分になった。
取り敢えず、どこかに車を停めてカラオケ店を一軒ずつ回り、うちの社員らしき集団が来なかったかと、聞いて回るか……。
彼はそう考え、停車できそうな場所を探す。
この辺りの路肩には客待ちのタクシーが列をなしているせいで、止められそうにない。
タクシーの車列の横をゆっくりと通り過ぎ、前方に停車できそうな場所を探していたら、五十メートルほど先の歩道に、亜弓らしき後ろ姿を見つけた。
その偶然に喜ぶのではなく、麻宮は目を見開いた。
この辺りもまだ人の賑わう繁華街。しかし、一本横道に入ればラブホテル街という道を、亜弓は男に肩を抱かれて歩いているからだ。