肉食系御曹司の餌食になりました
亜弓は真剣に話を聞いてくれて、麻宮の話が終わっても合わせた目を逸らさずに、そのまま考えの中に沈んでいた。
見つめ合う静かな時間が十秒ほど続き、やっと彼女が口を開く。
「私がここに住めば、聖志さんは安心してくれますか?」
「今までよりは、確実に」
「分かりました。じゃあ、早めに引越します。
よろしくお願いします」
企て通り、今回のことを利用して同棲承諾に結びつけた麻宮は、心の中でほくそ笑む。
しかし、その腹黒さは微かに口元に表れていたようで、策にはまったと気づいた亜弓は、「あっ」と呟いてから頬を膨らませた。
「そういうことでしたか。
聖志さんは本当に企むのがお上手で」
呆れたような物言いをしても、その後は笑って彼の企みを受け入れてくれる亜弓。
そんな彼女が、麻宮は愛しくて堪らない。
ふたり分のシートベルトを素早く外すと、レバーを引いて助手席の背もたれを倒し、彼は亜弓に覆い被さった。
驚く彼女に軽いキスをして、その耳に唇を寄せ、麻宮は甘く囁く。
「本心を明かせば、亜弓さんがあまりも魅力的なので、閉じ込めておきたくなるんです。他の男の目に触れぬように、と。
結婚前の段階で、私のものだと主張すれば……あなたは怒るでしょうか?」