肉食系御曹司の餌食になりました

「そうですか」

それ以外なんと言葉を返せばいいのか分からないし、興味もない話。

そんな素っ気ない相槌でも彼は機嫌を損ねることなく、柔らかな口調で話し続けた。


「真紅のバラを美しいと言う人は、きっと大勢いることでしょう。しかし私は注目を集めない花も美しいと知っています」

「え……?」

「私の住むマンション前に、街路樹の足元でひっそりと紫露草が咲いていました。
日射しを好まず日陰で可憐に咲くこの花に、私は健気な美しさを感じるんです」


今度は『そうですか』と言えなかった。

もしかしてバラと紫露草は、Anneと私の例え話では……と思っていたから。

やっぱり同一人物だと怪しまれている?

いや、そうじゃない。支社長はバラと紫露草が同じに見えると言ったのではなく、両方美しいと言っただけ。

そうすると彼の目には、Anneだけじゃなく地味な私も美しく映っているのか……。


以前、智恵に『亜弓狙いなんだ!』と言われたことを思い出していた。

まさか本当に……?

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