肉食系御曹司の餌食になりました

やっぱりバレてたんだと青ざめた直後に、ニッコリと笑う彼が言葉を付け足す。


「失礼、忘れ物と言うのは語弊がありました。
私からの差し入れを持ち帰るのをお忘れです、と言うべきでした」


ということは……これは昼間の忘れ物とは別物で、つまり正体はまだバレていないということでいいんだよね?

窮地から脱した気分で思わず深い溜息をついたら、彼がクスリと笑う。


「そんな差し入れですみません。
次回はもっと、気の利いたプレゼントを用意しますので」

「いえ、なにもいらないです……」


だから、もう来ないでほしい……とは、マスターのいる前で言えるはずもなく、抹茶プリンを紙袋の中に突っ込むと、私はアルフォルトを後にする。

階段を上って地上に出ると、昼間のように眩しいネオンに照らされる。

濃い夜の匂いが立ち込める中を、私は俯いて歩き出した。


< 41 / 256 >

この作品をシェア

pagetop