肉食系御曹司の餌食になりました
やっぱりバレてたんだと青ざめた直後に、ニッコリと笑う彼が言葉を付け足す。
「失礼、忘れ物と言うのは語弊がありました。
私からの差し入れを持ち帰るのをお忘れです、と言うべきでした」
ということは……これは昼間の忘れ物とは別物で、つまり正体はまだバレていないということでいいんだよね?
窮地から脱した気分で思わず深い溜息をついたら、彼がクスリと笑う。
「そんな差し入れですみません。
次回はもっと、気の利いたプレゼントを用意しますので」
「いえ、なにもいらないです……」
だから、もう来ないでほしい……とは、マスターのいる前で言えるはずもなく、抹茶プリンを紙袋の中に突っ込むと、私はアルフォルトを後にする。
階段を上って地上に出ると、昼間のように眩しいネオンに照らされる。
濃い夜の匂いが立ち込める中を、私は俯いて歩き出した。