肉食系御曹司の餌食になりました
面白い案だと思うけど、ブライダル会社と手を組んだり、大通公園の使用許可を取るなど、結構大掛かりで大変そう。
大雑把な算出での経費も、ちょっと冷や汗をかくほどになったし、それだけのことをしても、その後の販売促進に繋がってくれるのかは未知数だ。
この企画も通らない気がする……とは、リベンジに燃える智恵に言えない。
私にできることは企画書作りに協力し、出すだけ出してダメだったら、また別のものを一緒に考えるということくらいだ。
智恵は三枚のA4紙に書きなぐったメモを見て「今度はいけそうじゃない?」と目を輝かせたが、その直後に「でも、また支社長にボツって言われるかも……」と意気消沈。口から深い溜息を漏らした。
すると隣に座る井上さんが、チャンスとばかりに智恵の頭を撫で、下心のありそうな笑みを浮かべた。
「この前の企画は本当に残念だったね。俺はいけると思ったんだけどな。
そうだ、智恵ちゃん、残念会やらない? ふたりで飲みに行こうよ!」
彼氏持ちだと、分かって誘っているのだろう。
智恵の右手の薬指にはいつも同じ指輪が輝いているし、彼氏の話題もよく口にしている。
それなのに、なにを狙っているんだか……。