肉食系御曹司の餌食になりました
テーブルを挟んでふたりを見ている私。
心配はいらない。智恵は自分できちんと断れる性格をしているから。
口を挟まず黙っていたら、予想通りに智恵は頭に乗った井上さんの手をやんわりと外して、ハッキリと断った。
「彼氏がいるので無理です。
私じゃなくて亜弓を誘って下さい。亜弓は今、フリーなのでチャンスですよ」
思わぬ返球に『なんで私?』という気持ちで智恵を見ると、なぜかウインクを返される。
そういえば最近、『亜弓も早く彼氏作って』と言われた覚えがある。
その理由は、彼氏とのラブラブな話を聞いてもらいたいけど、私が独り身だと、嫌味や自慢のように聞こえそうで話し難いということらしい。
『別にそんなふうに思わないし、智恵の恋愛話なら楽しく聞けるよ』と言ったはずなんだけどな……。
智恵の断り方は井上さんも予想外だったようで、頬の筋肉を引きつらせながら仕方なく私に話しかけてきた。
「平良さん、ええと……行く?
ふたりで飲みに」
「いえ、夜遊びはしないことにしているので」
「そうなんだ! 平良さんは真面目だからな〜。いや〜残念」