肉食系御曹司の餌食になりました

「思ったんだけど、この企画の代表者、亜弓にしない?」

「え、なんで? 折角、智恵が考えたのに」

「そうなんだけど、自信なくて。
部長は多分OKしてくれるよ。よくも悪くも適当な人だから。
問題は支社長なんだよね。亜弓ならお気に入りだし、企画も通るんじゃないかと思って」


井上さんが、さっきの私とのふたり飲みを提案されたときより、もっと驚いた顔をした。

「平良さんが支社長のお気に入り⁉︎ どういうこと? 普通に考えてあり得ないと思うんだけど」と、失礼な疑問をぶつけられる。


一応女性なんだから少しは言葉に気をつけてよと思いつつも、共感はできる。

美人で華やかな智恵ならば、その可能性があるとしても、私は地味で目立たず、男性が隣に置きたいタイプの女じゃないから。


「お気に入りじゃなくて、からかいの対象ですよ」と井上さんに説明したら、急にミーティング室のドアが開けられ、支社長が姿を現した。


「失礼、使用中だと気づかなかったもので」


そういえば、ドアのプレートを使用中に切り替えるのを忘れていた。

ちょうど話題にしていたところだったので、驚いた後には、『まさか聞かれてないよね?』と、三人揃って冷や汗をかく。
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