肉食系御曹司の餌食になりました

支社長はテーブルの上にA4紙を置くと、腕組みをして目を伏せ、無言でなにかを考えている。

その整った横顔を見ながら鼓動が速度を上げるのは、恋の予感ではなく、返事次第でこの企画が立ち消えになるからだ。


企画書にまとめる前の段階でボツと言われたら、智恵が落ち込みそう。

なんとか続けさせてもらいたいところだけど、利益に結びつくのか怪しい内容だし、費用もかなりかかるから、やはり無理があるか……。


この後、智恵と井上さんと三人で残念会をする予感がしていたら、支社長がパッと目を開け、私に向けて「やりましょう」と微笑んだ。


「え、この企画で大丈夫なんですか?」


「なかなか面白そうです。観光シーズンの集客効果と話題性、マスコミにも取り上げてもらえるでしょう。

ブライダル会社とのタイアップは、式場を抱えるホテルやレストランに我が社の製品を売り込むチャンスが見えますし、将来的には利益に繋がる可能性を感じます」


口を半開きにして、支社長をまじまじと見つめてしまった。

検討に値するから、取り敢えず企画書にまとめて提出しなさいというのではなく、いきなりGOサインが出たっていうこと?

そんなに簡単に決めて大丈夫なの?


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