肉食系御曹司の餌食になりました
驚きを隠せない私を見て、支社長はクスリと笑い、さらに驚く言葉を口にする。
「久しぶりに私も前線で仕事がしたくなりました。この企画、私と亜弓さんで進めましょう」
「し、支社長とふたりでですか⁉︎」
「主に。これでも忙しい立ち場にありますので、少数の方が決めやすく進めやすい。後はお手伝い程度のメンバーを、事業部で五名ほど揃えていただけると助かります」
私と支社長のふたりでという言葉に、嫌な予感を感じる。
最近なにかと私に構うし、退屈しのぎのおもちゃにしたくて、そんなことを言い出したのではないだろうか。
いや……まさかね。責任ある支社長という立ち場や、この企画の経費を考えると、いくらなんでもふざけたりしないだろう。
ということは支社長の決断に、末端の部下として従うしかないけれど、智恵はどう思うだろうか?
心配して智恵を見ると、頬が紅潮し、小鼻が膨らんで、興奮がモロに顔に出ている。
折角考えた企画を、私に奪われるような結果となったことに悔しさはないようだ。
それよりも、支社長が私を狙っているとかいう間違った方向へ、また考えが向いてそう……。