肉食系御曹司の餌食になりました
智恵も異存がないようなので、「分かりました。よろしくお願いします」と、私は頭を下げた。
カタンと椅子を鳴らして立ち上がった支社長は、ブランド物の腕時計に視線を落とす。
どうやら、この後も時間を気にする仕事があるみたい。
「それでは亜弓さん、企画書を明後日までに制作して私に提出して下さい。一応、形として企画書がないと不都合が生じますので」
「明後日ですか⁉︎」
「大雑把なもので構いません。クリスマスまでには半年しかないので、急がないと間に合いませんよ。では、私はこれで失礼します」
パタンとしまったドアを見て、私は唖然としていた。
私達は来年、もしくは再来年の話をしていたのに、支社長は今年のクリスマスにこの企画をやるつもりなんだ……。
『よろしくお願いします』と言ってしまったことを後悔していた。
これから半年間、支社長と密度の濃い仕事をしなければならない。
会社では振り回され、店ではいつ正体がバレるのかとハラハラして過ごさなければならないのだろうか……。