肉食系御曹司の餌食になりました

運ばれてきた肉を焼き網に乗せ、生ビールのグラスを合わせて乾杯した後は、これまでになく話しが弾む。


「ということがありまして、納期を一週間早めることができるかと相談したら部長が……」

「へぇ、そんなことがあったんですか。なかなか面白い対応ですね。事業部は生真面目で固い印象を持っていたのですが、それは亜弓さんだけでしたか?」

「私、そんなに堅物じゃありません。仕事とプライベートの線引きはきっちりしたいだけで、普段は真面目でもないです」


主に仕事の話をしながら、目の前の焼き網には次々と肉が乗せられ、ビールと共にふたりの胃袋に消えていく。

気づけば、今飲んでいる中ジョッキのビールは、私が二杯目で彼は三杯目。

あんなに頼んだ肉も、残りは追加注文した壺漬けカルビだけとなる。


支社長に釣られて、私もかなり食べていた。
こんな時間に高カロリーの物を食べては、明日の体重が心配で「太りそう……」とぼやいてしまう。

でも、壺漬けカルビは食べたい。

これ、すごく美味しいけど値段もかなり高いから、事業部の打ち上げでは全員で三つだけ頼んで、私の口にはひと切れしか入らなかったんだよね……。


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