肉食系御曹司の餌食になりました

御曹司という背景だけでなく、人間として魅力的な人でもある。

涼やかな切れ長二重瞼に、高い鼻梁。
唇も耳も形が整って、健康的な小麦色の肌の上に全てのパーツが完璧な位置関係に配置されている。

加えて、スーツを通しても伝わってくる引き締まった体躯に高身長。

品のよさ、育ちのよさも言葉や態度ににじみ出ているし、ひと言で説明するなら彼はイケメン紳士だ。

それに経営者一族であっても偉ぶるところはなく、うちの支社の古参のおじさん達とも上手くやれていて、女性のみならず男性社員にも好かれていそう。


そんな完璧な麻宮支社長にひとつだけマイナス点を挙げるとしたら、私に絡んでくるところだろう。

いつも感じるのは、からかわれているという気持ち。

今日に限らずフラッと事業部に現れては、『たまには髪を下ろしている姿を見たいですね』とか、『明るい色味のオフィススーツをプレゼントしたら、着てくれますか?』とか、恥ずかしい台詞をいけしゃあしゃあと口にしては、私を無言にさせるのだ。

私だけ下の名前で呼ばれることも、恐らくからかいの一種だと思う。

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