肉食系御曹司の餌食になりました
「お疲れ。ほんと、毎日よくやってるよ。
支社長って意外と人使い荒いんだね。あ、間違った。亜弓使いが荒いのか」
その言葉は否定しない。この企画が始まった日から彼に振り回されている実感がある。
こっちが嫌そうにしていても、無理やり引っ張られて仕事させられている感じ。
でも……私以上に、彼が多忙を極めているのも知っている。
今日だって私と一緒に申請書の提出に行こうとしていたけれど、机上には決裁待ちの書類の山があったし、午後イチで会議が入っているそうだし、彼の秘書のような役割をしている総務の男性社員が『十五時から田川物流との商談入れてもいいですか?』と聞きにきていたし……。
支社長の体調は大丈夫だろうか?
もし倒れでもしたら、私ひとりでこの企画を進めるのは不可能なんだけど。
注文した和風冷製パスタを待つ間、コップの水をチビチビ口にする。
智恵の労いの言葉に「大丈夫だよ、ありがとう」と答えながらも支社長について考えていたら、そのぼんやりとした表情の意味を誤解されてしまった。
「亜弓、恋する乙女の顔になってるよ。
私のことは気にせず、支社長と一緒にお昼を食べてよかったのに」