肉食系御曹司の餌食になりました
ルミコさんが「寝不足なの? 若者らしくシャキッとしなさい」と彼の背中を叩くから、周囲に笑いが起きて助かったけど、今日はなるべくカイトに近づかないようにしよう。
不機嫌の原因は、私だろうし。
十四時になり、いよいよ誕生日会が始まる。
集まっているのは二十名ほどとまだ少ないが、パーティは夜中まで続くから、これからどんどん人が増え、最後の方はなにがなんだか分からないほどの盛り上がりになるはずだ。
始まったばかりの今が一番秩序あるとき。
マイクを手にしたシゲさんが「それでは我らがボスの入場です」と呼びかけると、ドアが開いてマスターが登場する。
その姿に笑いが起きた理由は、すすきののシンボル、十字街ビルの交差点に昔から掲げられているウィスキーのキャラクターのコスプレをしていたから。
右手に麦の穂を持ち左手にウィスキーのテイスティンググラス、羽帽子を被り付け髭までして、なかなか手が込んでいる。
去年はフライドチキンで有名なあのおじさんの、白ずくめの格好で現れたっけ。
拍手が湧いてマスターが少し照れながら挨拶し、生ピアノ伴奏付きのバースデーソング、ジャズバージョンを歌い、ケーキのロウソクの火を吹き消した。
誕生日会らしい一連の流れが終わった後は、さあ、お待ちかねの生ライブの始まりだ。