肉食系御曹司の餌食になりました
げ……酔っ払い。
カイトはそれほど酒に強くない。
ビールだと中ジョッキ四杯が限界で、管を巻いた後に寝てしまう人。
付き合っていたときに、上限を意識して楽しく飲めとあれほど言ったのに、私の注意はもう頭に残っていないのか。
その赤い目は、限度を超えていることを物語っていた。
酔っ払いのカイトは払われた手を私の肩に回し、中腰で体重をかけてくる。
「重いよ」という私の文句は無視されて、ヘラヘラ笑いながら支社長に言った。
「イケメンくん、騙されんなよ〜。これ、アンの普段着じゃねーし、普段は地味でババ臭い色のパーカーとか着てっから」
「か、カイト!!」
他のお客さんには地味だとバラされてもなにも困らないが、支社長の前だけは駄目。
初めての来店時にもたれた疑惑が、また復活したらどうするのよ。
慌てて立ち上がると、私に体重を半分預けていたカイトがよろけた。
「ちょっと来て。酔い覚ましに行こう」
カイトの腕を両手で捕まえて、引っ張るようにしてドアへ向かう。
廊下に出ると「すみません、今日は入れないんですか?」と若い女性客ふたり組に声をかけられた。
見覚えがないので、常連客ではない。
「ごめんなさい。今日は貸切なんです」と営業スマイルで受け答えをして、カイトを引っ張りエレベーターの前に行く。