肉食系御曹司の餌食になりました
そのとき、ドアが外側からコンコンとノックされる音がした。
マズイと、今度は別の意味での焦りが湧く。
この潰れたワインバーのオーナーが、後片付けに戻ってきたのか?
それとも、このフロアに入っているスナックのママかその客が、物音を不審に思いノックしているのか?
どちらにしても、不法侵入しているのがバレてしまう……。
カイトも同じ予感がしたようで「ヤベェ」という声を耳元に聞いた後は、私の腕を拘束する力が緩んだ。
もう一度ノックが聞こえ、今度はその直後にドアが開けられた。
ビクリと肩を揺らす私達の前に現れたのは、このバーのオーナーでもスナックのママでもなく、支社長で……。
初めて見るような険しい顔をした彼は、緩んだカイトの手から私を奪うように引き寄せ、スーツの腕の中に入れた。
目の前には彼の白いワイシャツの襟と、男らしい首筋。
微かに甘くてセクシーな香水の香りもして、突然踏み込まれた驚きと共に、私の心臓を忙しくした。