肉食系御曹司の餌食になりました
カイトがいなくなったワインバーの中で、私は大きな溜息をつく。
支社長の腕の中から出て、さっきカイトが座っていた高さのあるカウンターの椅子に座ると、おまけの溜息をもうひとつ。
窮地を脱した安堵と共に、カイトへの申し訳なさも感じていた。
カイトは今も、私のことが好きみたい。
別れて一年。その後に付き合った何人かの女性達と長続きしなかったのは、私に未練があったせいなのか。
別れの日に交わした会話が蘇る。
『は? お前、なにふざけたこと言ってんの?』
『ふざけてない。本気で終わりにしたいと思ってる。もう疲れたの』
『待てって! なにが気に入らないんだよ。昨日まで一緒に笑ってたのにーー』
『笑っていても、ずっと悩んでたんだよ。カイトが好きなのはアンだけで、私じゃないってことに。ごめん、もう本当に無理だから』
思い悩む日々の中で、心に余裕をなくした私は、ああいう別れ方をしてしまった。
今思えば、一方的で強引で、彼に優しくない別れ方だ。
別れるという結論は変わらなくても、もっと話し合って、カイトに気持ちの整理をつける時間をあげるべきだった。
そのツケが、今の私に跳ね返ってきている。
自業自得で、カイトを責めるのではなく、私が反省しないといけないよね……。