肉食系御曹司の餌食になりました

しばらく私の自由にさせてくれていたが、急に彼の大きな手が私の頬を挟んで引き剥がし、十センチの距離で見つめ合った。

お互いに上気して、息が熱い。

彼は唇を濡らしたまま、男の顔して私に言う。


「あなたはいつも私の自制心を破壊する。
責任を取って下さい」


『いつも』って、なに?

亜弓の方ならいざ知らず、店ではそんなふうに言われるほどの接触はないはずなのに……。

その疑問を口にできなかったのは、唇を塞がれたせい。

今度は彼主導のキスで、深く激しく、水音が立つほど濃密で執拗だ。

どこかで止めなければと思っても、その気持ちすら快楽に流されてすぐに見えなくなる。

背中に甘い刺激を感じるのは、彼の指先が緩急をつけて複雑な模様を描いているから。

合わせた唇の隙間に、堪らず淫らな声を漏らしてしまうと、彼がニヤリと笑った気がした。

ああ、ゾクゾクする……。

ワンピースの薄い生地の上からじゃなく、その手で素肌を撫でてほしいと思うほどに……。



やっと唇が離されたのは、数分後のこと。

さすがに息が苦しくて、これ以上は無理がある。

彼の首に腕を回したまま、その肩にぐったりともたれかかり呼吸を整えていると、彼の右手がスーツの上着のポケットに入れられるのが見えた。

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