肉食系御曹司の餌食になりました
なにか小さな物を取り出した彼に、「じっとしていて下さい」と言われる。
彼の指先は上へと移動し、私の髪に触れるから、ピクリと肩を揺らした。
「動かないで下さい」
ミルクティー色のウィッグの下は真っ黒の地毛で、髪を掻き上げられるのは困ると心配したけど、なぜか左耳のピアスを外されただけ。
その後は、別のピアスを付けられて、その作業が済んだ後にやっと呼吸の落ち着いた私は体を離して向かい合った。
見えない左耳に触れて確かめていると、その手を取られ、手の平にふたつのピアスを乗せられる。
ひとつは今、外されたもので、もうひとつは私の物ではない新しいピアス。
摘み上げると、ゴールドの金具に雫型をした大粒のアメジストが揺れていた。
「綺麗……」
「あなたにプレゼントです。
以前、なにか贈り物をと言ってから、その約束が遅くなり申し訳ありません」
それは多分、抹茶プリンの差し入れをもらったときのことだ。
『次回はもっと、気の利いたプレゼントを』と言われた覚えがあるけど、約束ではないし、いらないと断ったのに。