肉食系御曹司の餌食になりました
Anneのファンだと言ってプレゼントを持ってくる客がたまにいる。
スイーツや飲み物などの差し入れならお礼を言って受け取っても、バッグやアクセサリーなどの高額な品は丁重にお断りしている。
私は夜の接客業の女性ではなく、デートなどの見返りを求められると困るからだ。
それでも、支社長からのプレゼントを返したくないと思ってしまうのはなぜだろう。
その理由を今は見つけ出せそうになく、心は素直な喜びに支配されていた。
「ありがとうございます」とお礼を言って、右耳のピアスも雫型のアメジストに替えてみた。
私の両耳を見て、支社長も嬉しそうに微笑む。
「今日のあなたのネックレスも、アメジストですね」
「そうですね。偶然なのに揃えたみたい」
偶然と言ってから、違うかもしれないと思い直す。
このお気に入りのステージ用ネックレスは、黒いドレスのときには高確率でつけている。
支社長も何度か目にしているはずだ。
だから偶然でも適当でもなく、私の好みを理解して選んでくれたのではないかと考えていた。
「アンには紫色がよく似合う。
とても素敵です」
さりげなく好みの品をプレゼントしてくれる彼は、大人で魅力的な男性。
上司じゃなかったら、本気で好きになってしまいそう……。
心が流されそうで危うい私は、半歩後ろに下がって距離を取りながら、「大切に使わせてもらいます」と、作り笑顔を浮かべていた。