Narcissus
deception
彼は大きな窓の横にある小さなベッドの上で外をぼんやり見つめ、考え事をしている。

幾日か続いた雨は北上して行き、外は熱気を帯びていた。

今にもどうにかなってしまいそうな暑さであろう。

コンクリートから発せられるもやもやとしたゆげがそれを物語る。

「ゴロゴロしてないで早く準備してよ」と後ろから女性の声。

煩い顔をあえてしてみせる。

女性は毎度の事だと呆れ返り彼の視野から外れた。

彼は思い耽っていた。

二度と戻る事の出来ない蜃気楼の様なあの日々を。
< 1 / 15 >

この作品をシェア

pagetop