サヨナラの行方
とりあえず、この場から逃げようと思った。
そこまで主任だって執着はしないはず。
だから、簡単に逃げられる、と思った。
だけど、私が一歩横にズレたとたん、主任の腕がドンっと顔の横に来た。
その拍子に振り向いてしまって、主任と向き合う形になった。
いわゆる壁ドン状態だ。
なぜ、こんな状況になったのか分からない。
私が逃げれば、それを追うようなめんどくさいことはしないと思った。
「何をしているんですか」
狙った訳ではないけど、少し上目使いで訴えた。
きちんと顔を上げるのが嫌だった。
「悠月が逃げようとするから」
顔を上げるのを避けたのに、彼に髪を撫でられてそのまま顎を掴まれて持ち上げられた。
そして、唇が触れそうなほど近くでさっきのセリフを言われた。