サヨナラの行方



「今までのことを反省した。ここまで苦しめたことにも気づかなかった。
だから、墓前でも謝りたかった」


「……謝る?謝られる必要はないと思いますけど。課長だけが悪い訳じゃないですし」


「イヤ、それがダメなんだって。
俺は結局、悠月の優しさに甘えただけ。上司という権力を振りかざして、結婚している身なのに、自分勝手にやった俺が悪い」



違うよ。

甘えていたのは、私の方。

好きという気持ちを持ってしまっていたために、課長を拒めなかった。

周りを気にしながらも来てくれる課長に甘えていた。

だから、罰が下ったんだ。

権力を振りかざしていた訳じゃない。

ただ、惚れた弱みだっただけ。


そんなこと、今頃口が裂けても言えないから、つい顔をそむけてしまう。




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