サヨナラの行方
彼の行動は、徹底していた。
会社では上司と部下の関係を貫き、それ以外では私に甘える。
ただ、秘密にしろと言う言葉通り、誰にも言うことは許されなかった。
この会社に入って、すぐに仲良くなった紗希ちゃんにすら言えなかった。
それどころか、まともなデートだってしなかった。
逢うのは専ら、私の家だった。
彼の家にも行ったことはない。
行きたいと言っても、汚いとか理由をつけて行かせてもらえなかった。
外でのデートはなく、他のカップルを見て羨ましいと思うことも少なくなかった。
寂しいと思うことはあったけど、逢えば体を重ねた。
拒んだのは、本当に最初だけ。
彼が本気で私を好きになったら許そうと思っていたけど、彼はそれを許さなかった。
言葉巧みに私を操った。
気がつけば、逢うたびに体を求められていた。