サヨナラの行方



そうなってしまえば、彼が本気で好きだとか何を考えているかなんて、考える余裕もなくなっていた。


それでも、外で逢えないことに不満に思うことはあった。

それで喧嘩になることだってあった。

だけど、結局は彼に丸め込まれてしまう。

それ以上は、何も言えなくなってしまうんだ。


だけど、この時にきちんと話しをすれば良かった。

イヤ、そもそも付き合うことなんて了承しなければ良かった。

何がなんでも断れば良かったんだ。

そうすれば、今は違う道を歩んでいたはずなのに。


そんな誰にも言えない“ヒミツ”の恋は、5年という月日を持って終わりを告げた。

私が25歳、主任が33歳で課長に昇進するという噂がたった時だった。



「もうおしまい。俺は上に昇りつめるために、それなりの相手と結婚したいから」


「は?」




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