サヨナラの行方



「連絡して持ってきてもらったんです。向こうに帰るにしろ、ここにいる以上着替えとかは必要ですから」



そう言うと、少しだけ表情が緩んだ気がした。

その表情を見ても、課長が何を考えているのかよく分からない。

たかが私1人に構っている場合なのだろうか。

離婚をしたがっているけど、成立はしていない。

だったら、そちらを優先にやるべきじゃないのだろうか。


そんな疑問を浮かべながらも、同居生活をした。

実際は、課長に懇願されなくても自由に出歩ける身ではない。

部屋から出るだけで変装は必要だ。

簡単にホテル内だってウロウロ出来ない。

外になんて出られる訳もない。


自分でもよく分からなくなってしまう。

結局は、生きているとバレてしまった。

和樹の言う通り、バレた以上全てを知られるのは時間の問題だ。




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