サヨナラの行方



ペコリとお辞儀をしても、誰1人微動だにしない。

彼女に至っては、表情が崩れている。

目一杯目を見開いて、口もあんぐりと開いている。

女性がそんな顔をしていいのか。

元々見た目だけで、ふとした表情とか話し方とかはお嬢様ではなかったけど。

まぁ、お嬢様だろうが、結局同じ人間だもんな。



「え、ちょっと、何で……。悠月⁉」



1番最初に声を発したのは、紗希ちゃんだった。



「……お久しぶりです」


「ちょっと、久しぶりじゃないよっ。何でっ、生きているじゃないっ」



私に近寄ってきて、両腕を掴んでブンブン揺する。



「さ、紗希ちゃん、痛いよ」


「あ、ごめん。って、そうじゃなくて、死んだんじゃないの?」




< 243 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop