サヨナラの行方
「澤村さん」
課長が上司を否定するような言葉を口にしたとたん、常務が私の名前を呼ぶ。
「はい……」
「私は娘を守るために、してはいけないことをしてしまいました。上司としては間違った行動でした。
今更謝ったところで許してはもらえないでしょうけど、申し訳ありませんでした」
確かに今更ではあるけど、頭を下げてまで謝られた。
あの時とは、状況が変わったということか。
「間違っていることをしたのは、私の方です。なので、頭を上げて下さい。そこまでやられる必要がありません」
自分が悪いのは百も承知。
死んだことにしたのも、自分の意思。
だから、謝られることはない。