サヨナラの行方
3rd*不自由に感じた―和泉課長side―
『和泉くん、少し話しがあるんだがいいかな』
いきなり社長に内線で呼ばれたのは、忙しい日々が一息ついた頃。
社長がこうやって呼ぶこと自体は、珍しいものじゃない。
社長は、威厳はあるけどそれほど厳しい訳じゃない。
茶目っ気もあって、親しみやすい人ではある。
俺はなぜか、主任になった頃から気に入られていた。
そのために、出世が早いとか嫌みを言われたこともある。
これは、俺の実力だってのに。
まぁ、言われたところで痛くも痒くもないけど。
周りを蹴落としてでも上に昇りたいのだから。
「ちょっと、社長室に行ってくるから」
近くにいた子に一言言って、部署を出る。
出る前に横目であの子を見れば、忙しなく動いている。
本当にこの2年で成長したと思う。
入社当時は怒られてばかりで、大丈夫かと心配になったけど、今では1人全てをこなしている。