サヨナラの行方
当の本人は、何事もなかったかのように涼しい顔で仕事をしている。
やっぱり、何年経っても変わらないのだ。
「悠月、これ……って、どうしたの?」
私を見ながら驚いているのが分かる。
やっぱり、顔に出ていたのか。
「何でもないよ。
それより紗希ちゃん、どうしたの?」
一つ息を吐き、なんとか気持ちを落ち着かせて、紗希ちゃんと向き合う。
不思議そうな顔をしながらも、紗希ちゃんは仕事の話しを続けた。
コレは、誰にも“ヒミツ”のことだから。
同僚で親友の紗希ちゃんにも言っていない、私と彼の“ヒミツ”だから。
過去のこととはいえ、誰にも知られてはいけない。
「澤村さーん」
元気のいい声で呼ばれたかと思えば、入り口で他の部署の人が手招きしていた。