サヨナラの行方
その後、早々に事務手続きをして、俺は原川常務の娘と結婚した。
会社では、部署内で簡単に報告だけをした。
別に、結婚したからって何か変わる訳ではないから。
変わることと言えば、これで完全に女からモノをもらうことも、告白されることもなくなることだ。
それは、ありがたいこと。
正直、知らない部署のヤツとかやめて欲しかったから。
これでもう、好きなだけ仕事に打ち込める。
あとは、出世の道を進むだけだ。
そう思った俺に、思わぬ落とし穴が待っていたんだ。
「冬馬さーん、お帰りなさい」
俺が帰るなり、彼女は俺にくっついてくる。
「ちょっと疲れているから、離れて下さい」
「えー、残念です……」
そう言いながらも、離れる気配はない。