サヨナラの行方



どう話すかなんて考えていなかった。

説明は省いて、ヤることしか頭になかったから。

問いかけられても、説明するつもりはなかった。

説明したところで、自分勝手とか、最低とか言われるのは目に見えている。

それに、彼女は怒っている訳ではなさそうだ。

悲しい、泣きたい、そんな表情をしている。

7年間、直属の部下だ。

その上、5年間近くで見てきた。

些細な表情の変化は分かるつもりだ。



「結婚した相手とはヤりたくなかった。ただそれだけ」


「それだけって……だったら他にいましたよね?私じゃなくても、課長の言うことを聞いてくれる人」


「いない。信用出来るのは、悠月しかいないから」



そう言うと、彼女は驚いた表情をして俺を見る。

名前を呼んだことにだろうか。

信用出来ると言ったからだろうか。

それとも両方か。




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