サヨナラの行方
悠月も最初こそは、全力で拒否していた。
だけど、何度も繰り返しているうちに、何も言わなくなった。
諦めたと言った方が正しいか。
こっちで癒されながらも、帰れば嫁という名の者がいる。
コイツは相変わらずで、俺が家に帰ればべったりくっついている。
そして、なんとかそういう雰囲気に持ち込もうとしている。
それでも、気づかないふりを続ける。
キスどころか、体に触れるだけでも嫌なのに。
「たまには早く帰って来てください。夫婦の時間も必要でしょう?」
そっと、俺の手に触れて、そんなことを言う。
正直、寒気がした。
この手を振りほどきたかった。
俺らに何の時間が必要というのだろう。
コイツの相手をしているぐらいなら、仕事をしていた方が有意義だし、悠月に逢っている方がましだ。