サヨナラの行方



それでも、常務の娘だから邪険には扱えない。



「そうですね。仕事が落ち着いたら」



にっこり笑って、大嘘をつく。

仕事のことが分からないコイツは、それで騙される。

まぁ、忙しいのは本当のことだから、常務に確認されても大丈夫だ。



「すみません。仕事が残っていますので、部屋に戻ります」



家に帰っても、長い時間2人でいることはない。

食事は取らないから、帰ってすぐに部屋にこもる。

寝室は別にしたから、こういう時便利だった。

彼女が入ってくることもない。



これで、当分はやっていけると思った。

彼女はおっとりしているし、勘づかれることはないと思っていた。

行動力もないと思っていた。


だけど……彼女の本質を見抜けなかったんだ。




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