サヨナラの行方
「じゃあ、俺帰るから。ちゃんと服着て、暖かくして寝なよ」
頭をポンポンとして、彼は奥さんがいる自宅へ帰って行く。
この状況は最低でも、行為そのものや、そのあとは優しかった。
余韻に浸らずにすぐ帰る訳でもなく、まったりする時間もあった。
だけど、必ず帰る。
それが、たまらなく寂しく感じる。
行為自体は、本当に愛されているんじゃないかってぐらい優しかった。
勘違いしてしまうほどに。
それでも、帰って行く後ろ姿を見て、私が隣にいてはいけないのだと思い知る。
課長の相手である常務の娘には、逢ったことがない。
会社に来たことは1度もない。
だから、どんな人かは分からない。
ただ、聞くところによると、相当な美人だとか。
常務の娘に加えて美人だったら、課長だってそっちを選ぶに決まっている。