サヨナラの行方
「今日、何かあったっけ?」
会社の入り口で偶然を装ってここまで一緒に来た課長が、こそっと耳元で言う。
誰も見ていないからって、近すぎる。
「何もないと思いますが」
平然を装って答える。
でも、課長もこの騒ぎには身に覚えがないらしい。
不思議に思っていると、囲っていた輪が広がった。
誰かを通そうと、道が開く。
「……アイツ……っ」
急に、課長の低い声が近くで響く。
ちらっと見ると、憎いような顔をして睨み付けている。
その課長の目線の先を見ると、ものすごく美人な女性が立っている。
なるほど、人だかりはこのせいか。
でも、女でも見とれそうなほどの美人だ。
綺麗なワンピースを着て、清楚なお嬢様に見える。
……ん?お嬢様?