サヨナラの行方
「冬馬さんっ」
急に、その女性が満面の笑みで名前を呼んだ。
その名前は、どう考えても課長の名前だ。
「もう、寂しかったんですよ」
そう言って、公衆の面前で課長に抱きつく。
その瞬間、全員がざわつく。
それを見る限り、誰もこの女性の正体は分かっていないらしい。
満面の笑みのお嬢様に比べて、課長は無表情。
両極端すぎて笑えるけど、そんな状況でもない。
一体この女、何者だろう。
「見つけた」
課長に抱きついたまま、お嬢様は急に隣にいた私の方を見て言う。
そして、みるみるうちに笑顔はなくなっていく。
私を睨み付けているようにも見える。