サヨナラの行方
知り合い……ではないし。
美人に睨まれると、迫力あるんだけど。
「あんた、何平然と人のモノを取ってんの?」
課長から離れて、私に向かって凄んでくる。
私、何かしただろうか。
その前に、この人が何者か分かっていないんだけど。
人のモノって何?
「ちょっと、何しているんですか。
そもそも、何しに来たんですか?」
私を庇うように、課長が間に割って入る。
さっき抱きつかれてはいたけど、親しい仲ではないのだろうか。
だって、不自然に敬語だ。
「冬馬さん、大丈夫ですよ。邪魔者は、妻である私が排除します」
「妻⁉」
周りにいた社員が、一斉に驚きの声をあげる。