サヨナラの行方



微かに、指とかが震えてきている。

感覚もなくなってきている。

自分がちゃんと立っているのかさえ危うい。



「しらばっくれないでよ。ちゃんと証拠は押さえているんだから」



そう言って差し出したのは、課長が私の家を出入りする写真だった。

ドアを開けたとこが写っていて、相手が私だということもはっきり写っている。

言い逃れの出来ない状況だ。

だけど、これをどうやって撮ったんだろう。

あまりにもタイミングが良すぎる。

そんなことを考えてみるけど、口に出して質問なんて出来ない。

何かを言えば、何かが返ってくる。

余計なことは言わない方が身のためだ。



「冬馬さんの帰りが遅いから変だなって思ったの。調べてみたら、この子の家に通っていたのよ。
まさか、上司に手を出すなんて。最低よね」



……言い訳はしない。

最低なことをしているのは分かっているから。




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