サヨナラの行方
だけど、今言ったこと以外にもう一つ理由がある。
それは、渡した瞬間、悲しそうな顔をすること。
ほんの一瞬だけ。
すぐにいつもの表情に戻るから、見間違いかと思った。
もしくは、私のちょっとした願望かと。
だけど、毎回だった。
意図してなのか、それとも素なのかは分からない。
それでも、渡すのも申し訳なく思うようになった。
その上怒られたこともあり、渡さなくなった。
とは言え、どこかの令嬢からなら喜んでもらうのだろうけど。
「課長だっていい歳なんだから、近いうち結婚しましたって報告があるよ。
何より、あんな優秀な人、周りがほっとかないでしょ」
紗希ちゃんの言葉に、心臓がドクンと鳴った。
確かに、紗希ちゃんの言う通りだ。
いくら課長でも、いずれ結婚の報告はあるだろう。
だけど、私はそれを黙って受け入れることが出来るのだろうか。
笑顔で祝福出来るのだろうか。