サヨナラの行方



「素直に認めてくれて嬉しいよ。
今日までご苦労だった」



労いの言葉を社長から言われたけど、全然ありがたみも何もない。

社長の表情もそんな感じだから。


ため息をつきたいけど我慢して、人の垣根を分けて自席へと行く。

簡単に片付けをして、私物を鞄の中に入れる。



「お世話になりました」



みなさんに頭を下げた。

それから、もう1度垣根を分けてドアへ向かう。

その途中、彼の横を通る。

彼の前で立ち止まり、


「これで、満足ですか?」


そう言って、立ち去った。

何が何でも、一言言わないと気がすまなかった。

負け犬だろうが、惨めであろうが。



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