サヨナラの行方



逃げるように地元を出て、一切連絡もしなかった。

嫌いだった訳じゃない。

喧嘩した訳でもない。

それでも連絡をしなかった私を、家族は何も聞かず受け入れてくれた。

小さな街だ。

すぐに噂が回ってしまうかもしれないけど、今は静かに過ごしたかった。


それから、電源を落としたままでいた携帯の番号を変えた。

彼が知っている訳はないけど、会社には届けている。

探すことなんてしないだろうけど、何かの拍子で漏れる可能性もあるから、全てを断ち切る。

この先、想い続けても叶うことはない。

2度と逢うことだって出来ない。

あの会社に入ってからのことは、全て忘れよう。

実家でやり直すんだ。

次こそ、まともな恋愛をしよう。

彼のおかげで、少しは恋愛経験が出来た。

今度は、人に迷惑をかけないような恋愛がしたい。

誰からも祝福されるような恋愛を。



そう願ったのに…………。




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